甘えたがり煩悩
*
「後輩の癖に生意気」
「期限切れの女子力」
「くっ……! くそが!」
「頑張ってもミトコンドリア以下」
「ミトコンドリアと私に謝れよ!」
「はい、先輩の負け」
「もうやだこの後輩……」
帰りがけ、私たちは『暴言しりとり』なるものをやりながら、歩いていた。
当然、私に勝ち目などなかった。それはもはや、しりとりではなく『暴言やりさし』くらいの勢いで、私の心をぐっさぐさ刺してくる容赦ない後輩の餌食になっていた。
「俺、肉まんがいいです」
「うまい棒?」
「先輩は顔も悪いのに耳も悪いんです?」
「ここぞとばかりに罵倒する後輩さん尊敬します」
「うだうだ言ってないで、早く買ってきて下さい。俺、待つのも待たされるのも嫌いです」
「いつか刺されるよ」
「あ、でも待たすのは好きですかね」
「いつか刺されるわ」
確信に変わった瞬間だった。
私はずいずい急かされるように、近くのコンビニに入る。後輩は、ついていくのも面倒なのか、自動ドアの少し横にずれてスマホをいじり始めていた。そんな背中をガラス越しに見て、本当にこいつ王子様って呼ばれてるの? と疑問に思いながら前を向いた、その時。
とん、と誰かと肩がぶつかる。私の足は少しだけよろけ、前のめりに倒れそうになったのを、とっさに出てきた腕が止める。
あ、危ない。転ぶところだった。お礼を言っておこう。そう思って、顔を上げると、目の前の見開いている瞳と視線がぶつかった。