甘えたがり煩悩





「後輩の癖に生意気」

「期限切れの女子力」

「くっ……! くそが!」

「頑張ってもミトコンドリア以下」

「ミトコンドリアと私に謝れよ!」

「はい、先輩の負け」

「もうやだこの後輩……」


帰りがけ、私たちは『暴言しりとり』なるものをやりながら、歩いていた。
当然、私に勝ち目などなかった。それはもはや、しりとりではなく『暴言やりさし』くらいの勢いで、私の心をぐっさぐさ刺してくる容赦ない後輩の餌食になっていた。


「俺、肉まんがいいです」

「うまい棒?」

「先輩は顔も悪いのに耳も悪いんです?」

「ここぞとばかりに罵倒する後輩さん尊敬します」

「うだうだ言ってないで、早く買ってきて下さい。俺、待つのも待たされるのも嫌いです」

「いつか刺されるよ」

「あ、でも待たすのは好きですかね」

「いつか刺されるわ」


確信に変わった瞬間だった。


私はずいずい急かされるように、近くのコンビニに入る。後輩は、ついていくのも面倒なのか、自動ドアの少し横にずれてスマホをいじり始めていた。そんな背中をガラス越しに見て、本当にこいつ王子様って呼ばれてるの? と疑問に思いながら前を向いた、その時。



とん、と誰かと肩がぶつかる。私の足は少しだけよろけ、前のめりに倒れそうになったのを、とっさに出てきた腕が止める。


あ、危ない。転ぶところだった。お礼を言っておこう。そう思って、顔を上げると、目の前の見開いている瞳と視線がぶつかった。




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