異聞三國志
第七章 北伐
呼び出された士郎に、諸葛亮はこう切り出した。


「庶よ、貴公の働きは目覚ましいものがある。」


「有り難うございます。医者じゃないのに、医師の真似事をしてしまい。」


「いや、貴公は立派な医者じゃ。して、我が国が最近北伐の準備を始めておるのは、そなたも知っておろう。」

「はい。」


「ついては、貴公に・・・、軍医兼医療面での補給担当の文官として従軍して欲しいのだ。」


「ええ！しかし、私は武芸の心得もなく、医者でもないから、使いものにはならないと思うのですが。」


やはり 士郎にはいくら文官としてだとは言え、戦争に参加することになるのは、辛いことであった。


「貴公は立派な医者であり、官僚だ。その貴公の力を使わずに中原回復、漢室復興の大義は果たせないと思われる。だから、どうか頼む、この通りだ。」


諸葛亮は深々と頭を下げた。


「閣下、辞めてください。頭を上げてください。わかりました、もうしばらく、考える時間をください。」

士郎はとりあえず、答えを保留した。
< 44 / 93 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop