異聞三國志
しかし、だからこそ惨状に目を覆いたい、気持ち悪くなりながらも、必死に止血や傷の手当てをしていた士郎。

その最中にも、兵士達は息絶えていった。


救ってあげたい、しかし。


感傷にすら浸ってられないくらい患者は来ていた。


士郎は懸命に治療した。


兵士は少しずつ休憩はさせていたが、魏軍は昼夜とは問わずに猛攻をかけた。一週間で落とさないと援軍が来襲する危険があったのである。3日間はまだよかった。さすがに4日目くらいになると、兵士達にも疲労の色が出てきていた。


それは魏軍も同様ではあったが如何せん兵士の数に優位があったために、兵士を休ませつつ攻撃出来たのである。


そんな最中


5日目であった。


『諸葛庶殿、すまん、かすり傷だが、左腕に矢が刺さってな。』

関興であった。致命傷ではないものの。左腕は、上腕部に矢が貫通していた。


『抜くぞ、痛いぞ。』

士郎は矢を引き抜いた。出血した。止血をしたものの、左腕が使えなくなる可能性があった。

『こんな時に平殿がいてくれたら。』


士郎は、信頼できる虞平の存在感を感じていた。
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