彼女が虹を見たがる理由
それだけでも悲惨な事件だったが、なんとその犯人はクラスメートの内山和輝（ｳﾁﾔﾏ　ｶｽﾞｷ）という生徒だったのだ。

内山は中学時代からヤンチャで万引きやひったくり事件を何度も繰り返していた。

高校に入学してからは裏の人間たちとも繋がりができたという噂で、学校内で内山に逆らう人間は誰もいなかった。

一度だけ、内山ほどではないが血の気の多い男子生徒が喧嘩をふっかけたらしいが、その生徒は翌日から学校に来なくなった。

内山が組織の人間を使って彼を消したのだという噂が学校中に流れ、それ以来2年Ｂ組は内山を頂点とするクラスカーストが出来上がっていた。

そんな内山が捕まった。

そのことでクラスカーストは崩れ、事件後は穏やかな学校生活が続いていた。

それもこれも、事件に懸命に向き合ってくれた父さんのおかげだ。

最近帰りが遅かったのも、内山の起こした事件を追いかけていたからだ。

「これで元通り、平和な日常を送ることができるよ」

俺はそう言い、父さんにビールをついだ。

父さんは口に泡をつけながらそれをうまそうに飲み干した。

「そうだ雄和。これをやろうと思ってたんだ」

父さんは何かを思い出したようにそう言って、ズボンのポケットから茶色い封筒を取り出した。

「なに、これ？」

「開けて見なさい」

そう言われて俺は封筒を開けた。

中には遊園地のチケットが2枚入っている。

しかも最近人気の遊園地のチケットだ。
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