彼女が虹を見たがる理由
移動時間の20分と、乗り物に乗るまでの待ち時間は何を話したらいいんだ?

好きな食べ物や番組の話を手当たり次第に聞いてみようか。

何か面白い返事が聞けれるかもしれないし。

「なにしてるの」

1人でずっと考えていると後ろから不意にそう声をかけられて、俺は思わず飛び上がった。

振り向くと無表情の村田さんが俺を見上げている。

色々と考えていたのに『なにしてるの』と言われてしまったのは残念だったが、俺の思考回路はそこにはなかった。

「なに……?」

ジロジロと見ていると怪訝そうな顔をされてしまった。

「いや、ごめん……」

俺はそう言い、顔を赤らめた。

だけど村田さんから目を離す事ができない。

ブルーのワンピースに白いカーディガン。

少しヒールのあるブルーのミュールに、白いバッグ。

ブルーと白で統一されたその格好が、とてつもなく可愛かったから。

村田さんがこんな女の子らしい格好をしてくるとは思わなかった。

普段からよくこういう服を着るのか、それとも今日は特別だからと思ってくれたのか……。

そこまで考えて俺は強く頭を振った。

なに考えてんだ。

村田さんは野間の事が好きなんだ。

俺がでしゃばる場面じゃないんだ。
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