彼女が虹を見たがる理由
「それをクラスメートには話さないのか?」

「話してどうなるっていうの?」

その質問に俺は返事ができなかった。

ただでさえ浮いた存在の村田さんだ。

その上幽霊が見えるなんて言えば更に敬遠されるだけだろう。

村田さんはそれがわかっていたから、クラスメートに何も言わないままなんだ。

「でも……そんなの……」

「いいの。あたし、1人は嫌いじゃないから」

そう言った村田さんの横顔はどこか寂しそうで、俺は黙って彼女の手を握りしめるしかできなかったのだった。
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