彼女が虹を見たがる理由
「なにが言いたい?」

心臓はドクンッドクンッと大きくはね、警告を促している。

この女は危険だ。

俺はここにいるべきじゃない。

話を聞くべきでもない。

しかし、足は動かなかった。

心のどこかで、こんな女に負けるわけがないと思っているのかもしれない。

俺はなんだってできる。

今までだってそうだった。

「学校内では接点の少ない2人が同じ行動を起こすなんて、珍しい。2人とも校門に何かを落として、それを夜中に探しに来るなんて、そんな偶然ありえない」

その言葉に、俺はギリッと奥歯をかみしめた。

「ハッキリ言ってみなよ」

俺は感情を押し殺し、無理やり笑顔を浮かべてそう言った。

「じゃぁ、ハッキリ言う」

ジョウロの水がなくなり、水音が消えた。
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