彼女が虹を見たがる理由
村田さんがやったことなんだからほっとけばいいんだけれど、彼女の小ささが良心を痛ませた。

「行こう」

「お、おう」

俺はぎこちなく笑顔を浮かべて頷いた。

こうして村田さんと2人で帰る事があるなんて、夢にも思っていなかった。

普段は誰とでもよく会話をしている俺だけれど、相手が村田さんとなると何を話していいのかわからなくなる。

校門を出る前から会話の糸口を探すため、気が付けば必死になっていた。

「そ、そういえば村田さん、最近体調悪い?」

一か月ほど前から村田さんは登校してくると同時に保健室へ直行し、一時間目を寝て過ごすようになっていた。

「学校へ来る時と帰る時だけ、体調が悪くなる」

村田さんは特に抑揚のない声でそう返事をした。

「へぇ……」

それはどうして?

そう質問していいものかどうかわからず、会話は途切れる。

そして校門まで差し掛かった時、ふと違和感が胸を付いた。

学校に来る時と、帰る時?

学校に来る時に気分が悪くなるのはわかる。
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