彼女が虹を見たがる理由
暗い道をバイクは猛スピードで走りぬける。

そして、事故は起こった。

街中を走り回って風を感じ、そろそろ満足してきたという時だった。

丁度学校の付近を通っていた。

校門の前を通り、どこかにバイクを捨てて帰ろう。

そう考えた時、目の前に人影が見えたんだ。

咄嗟にブレーキを強く握りしめた。

バイクはバランスを崩して傾き、俺たちは道路へと投げ出された。

スピードの出ていたバイクはそのまま横滑りし、そして歩いていた女性にぶつかったんだ。

女性の体はぶつかった衝撃で吹き飛ばされ、学校の壁に激突した。

バイクはその少し先まで行って壁に激突し、ようやく停止したのだ。

静かな夜の街に騒音が巻き起こり、俺は咄嗟に野間の腕を掴んでいた。

「おい……」

野間が何か言おうとするのを無視し、走り出した。

事故のせいで体中は痛かったが、誰かが民家から出て来る前に逃げる必要があった。

「大丈夫だ、父さんに連絡する」

現場から離れた公園にたどり着き、俺はようやく足を止めた。

しかし、休む暇なくスマホを取り出し、父さんに電話をかけた。

何コール目かにようやく電話がとられる。

「もしもし父さん!? なぁ、頼むよ!」

父さんの声を聞く暇もなくそう言うと、電話の向こうからため息をつく音が聞こえて来た。

『またなにかやったのか』

父さんの呆れたようなその声に、俺は心底ホッとしたのだった。
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