彼女が虹を見たがる理由
「ま、待ってくれ……!!」

その背中に叫ぶが、村田は振り返らない。

終わる。

俺の人生が、終わる。

ギリッと奥歯をかみしめた。

こんな所で終わるわけにはいかない。

あんな小娘のせいで台無しになるわけにはいかない。

気が付けば、俺は村田の首に両手をかけていた。

驚いて振り向こうとするが、そのまま両手に力を込めた。

細い首に自分の指が食い込んでいくのがわかる。

このまま力を入れ続ければ村田の首は折れてしまうんじゃないか。

そんな風にも思う。

だけど、大丈夫。

また父さんに頼めばいいんだ。

父さんは俺のためならなんだってやってくれる。

だから俺は最強でいられたんだ。

「ははっ……」

思わず笑みがこぼれた。

自分自身が崩壊していくのがわかる。

俺はすでに1人殺したんだ。

2人殺そうが3人殺そうが、変わらない。

「あははははは!!」
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