Bartender
「だから…」

正文は床のうえに座り込むと、
「別れて欲しいんだ」

私に土下座をした。

「仕方がないことなんだ。

俺が娘さんと結婚をしなければ、店は潰れてしまうんだ。

じいさんの代からやってきた店をどうしても潰したくないって言うんだ。

俺が話を断ったら、その家族と従業員が路頭に迷う結果になってしまうんだ」

「あ、あの…」

「5年もつきあっておいて、今さら何を言っているんだって言うのはわかってる。

俺のことはいくらでも恨んでも構わない」

必死で土下座をしている正文に、私はどう声をかければいいのかわからなかった。

「わ、わかったよ…」

呟くようにそう言った私に、正文は顔をあげた。
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