Bartender
なるほど。

ここでもし私が断って、そのせいで制服が濡れてしまったと店から因縁をつけられたらたまったもんじゃない。

仕方がない。

「じゃあ…」

私は伊地知くんに持っていたかさを差し出した。

「えっ、千沙さん?」

かさを差し出した私に、伊地知くんは不思議そうな顔をした。

「あなたにかさを貸してあげるわ。

私は帰るから」

「いや、でも千沙さんが…」

「私はすぐに家に帰って、お風呂に入るから大丈夫よ。

かさはいつでも返してくれればいいから」

伊地知くんの手にかさを握らせると、私は走って彼の前から立ち去った。
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