Bartender
すぐにドアを閉めようとしたら、
「待ってください」

入ってきた手によって止められた。

「かさを返しにきただけですから」

伊地知くんはそう言って、先ほど握らせたかさを見せた。

「ああ、そうだったの…」

私は彼の手からかさを受け取った。

「勤務中じゃなかったの?」

そう聞いた私に、
「開店は8時からです」

伊地知くんは答えた。

「そう、ご苦労様。

かさも受け取ったから、ドアを持ってる手を離して」

そう言った私に、
「千沙さん、あきらめませんから」

伊地知くんが言った。
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