Bartender
 * * *

伊地知くんは私が住んでいるマンションの1階で経営しているバーのバーテンダーだ。

2年前くらいにオープンしていたことは知っていたけど、そこへ行く機会は特になかった。

昨日仕事の帰りに何となく立ち寄ったのが初めてである。

閉店の準備をしていたけど、初めてだから特別にと言うことで入れてもらった。

「マスターには内緒ですよ?」

そう言って、伊地知くんはイタズラっ子のように笑った。

久しぶりのお酒だった。

仕事が忙しかったと言うこともあり、最近は飲む機会がなかったのだ。

伊地知くんとお酒を飲みながらいろいろな話をして――と言っても、お酒を飲んだのも話をしたのもほとんどが私だから彼は聞き役に徹していた――過ごした。
< 6 / 101 >

この作品をシェア

pagetop