Bartender
映画はクライマックスに突入した。

主人公たちは本日の大会までに今まで練習を積んできた。

今日はその練習と彼らの実力が試される時だ。

手に汗を握るその展開に、私の心臓がドキドキと鳴り出した。

みんな、頑張れ…!

私はこれまで彼らを見守ってきた関係者のような気分だ。

その気分に浸っていたら、ギュッとそれまで肘かけに置いていた手が誰かに握られた。

えっ、伊地知くん?

一瞬そう思ったけど、彼は私の左側に座っていることを思い出した。

握られているのは私の右手だ。

チラリと、右側の方に視線を向けた。

見なきゃよかったと、私は心の底からそう思った。
< 76 / 101 >

この作品をシェア

pagetop