叶うはずのない恋愛
「前川、乗ろうぜ。」


いつまでも話しているあたしに痺れを切らしたのか夏川が言ってきた。


「あ、うん。」


あたしのテンションは急降下。紗紀ゴメン。あたし夏川とペアになれて嬉しいって思ってる…。そう考えながら夏川を追い掛けた。
観覧車の店員さんに入れてもらい、いざ観覧車!


だんだんと高さが高くなっていく…。あたしはなるべく外を見ないようにした。


「結構この観覧車高いなー。その分景色綺麗だけどな。」


夏川は高い所が平気なのかずっと景色を見ている。


「そ、そうだね。綺麗だねー。」


あたしは鞄を抱きしめながら下を向いて言った。


「なあ、前川…。顔色悪いけどもしかして、高い所苦手とか?」


「…………。」


あたしは何も言わなかった。だって弱点知られるの嫌だもん。


トンッ。
音が聞こえた。横を見るとさっきまで正面に居た夏川があたしの横に座っていた。


「え?」


声をだした理由はあたしの手を握ってきたから。


「怖いんだろ?無理すんなよな。言ってくれたらそのへんに座って疾風達の事待ってたのに。」


夏川は心配そうに震えているあたしの手を強く握ってくれた。


ねえ、夏川。どうしてあなたはそんなにも優しいのですか?彼女でもないあたしにこんな事してくれたらあたし馬鹿だから期待しちゃうよ?
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