赤い婚礼衣装
赤い婚礼衣装
――――ああ、やっとだ。
私の心はいつまでも晴れることはなかった。生きているのに、まるで死んでいる。そんな日々がいつ終わるだろうかと思った。世界は残酷である。わかっている。だからこそ、私は世界を殺す。
「汝、かの女を妻とすることを誓うか」
真っ白なドレス。この布を作るのにどれだけのお金がかかったのだろう。どれだけの血が流れたというのだろう。
この人は、悪魔だ。
私は ベールに顔を隠したまま、おとなしい女を演じる。エウリュ、お前が終わらせろ。お前の愛するモノは、あいつに殺されたのだ。わかっているな?ああ、エウリュ様、どうか我々をお救いくださいませ。どうか、どうか。多くの手。
「―――誓おう」
言葉を震わせながらとうた声に、力強く悪神が答える。
お前のせいで、どんなに人々が苦しんでいるのか知らない。いや、知らないではない。知っていても、どうもしないだろう。
退屈だからと、人を殺す。同族も殺す。それも残虐な行為で。
私だけに優しくても、それは愛ではない。
この人は、殺した。多くを殺した。
神を、人を、動物を、自然を。
「汝、かの男を夫とすることを誓うか」
ああ、もうすぐ、もうすぐ。