赤い婚礼衣装






 体が傾き、床に落ちた。

 真っ白な衣装が赤く染まっていくそれに、私はとっさに近くに膝をつき、エニンルドの顔を見た。青白い顔。床には銀の髪が広がる。
 私が刺した短剣は深く刺さったまま、血を流す。

 エニンルド、様。
 私の呟きと重なるように、響いた。




『こんな世界、何の価値があるという?』




 それは、頭上から響いた。いや、正しくいえば鏡からだろう。

 淡く光をおびたそれにうつるのは、一体なんだ?光、というのだろうか。だがやがてそれは影となり、人の姿となる。


 怖い。
 私は床に腰が落ちたまま震えた。あれは、なんだろう。あれは。


 ふとその手に、わずかに温もりを感じた。はっとして見るとエニンルドが向こうを睨んでいる。温もりはエニンルドが私の手をつかんでいるからだ。
 



『人々は欲のために殺す。自然は失われる。だから創造主はこの世界を去った。そのとき何故世界を滅ぼさなかったのだろう。全て終わらせていれば、君らが悪神などと蔑まれることはなかったのに』




 どういう、ことなのか。
 蔑まれることはなかった?

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