赤い婚礼衣装
大地は血に染まり、神は身を隠し始める。地上にいる人々は怯えて生きていた。衰弱していく人々のために、神である父は身を削りながら救い続けた。その間母は病に倒れ還らぬ人になっても、父は街を護り、天上に問い続けた。
―――何故ですか。
―――何故あなた方は身を隠し、戦おうと、守ろうとしないのか!
力を使い続けた父が倒れて亡くなったあと変わりに私が立った。私は半神だ。父に比べると力なんてあまりない。しかし無いよりはいい。
私は祈った。
天上のいる神と、地上に生きるものは共に生きてきた。神は地上に生きるものらを助けた。地上に生きるものらは、感謝していた。敬い、共に手をとって生きてきたはずなのに、何故ですか。
「エウリュよ。そなたは美しいな」
「……エニンルド様、私は美しくもなんともありません」
「何をいう。その漆黒の髪に、黒い瞳は神秘的だ」
エニンルドは神である。
ふっと姿を見せるときは決まって、私の側にいる。そして「共に来い」などと囁くのだ。
その美しい手で何人殺したのだろう。私はその手が恐ろしかった。神特有の美しい容貌も、うっとりするような声も、私は恐ろしく、また憎んでいた。
「貴方は何故殺すのです」
「そうしなければならないからだ」
私は、揺らぐことがある。強く糾弾しそりように言葉を投げても、私にならエニンルドは怒らない。ただ、穏やかな波のように耳を傾けるだけ。他になら暴力、へたしたら殺してしまうだろうに。
何故。