赤い婚礼衣装





 父は生前、天上がおかしくなっている
といっていた。私は天上のことなど知らないしわからないが、父は不安そうな私を抱き締めながら、大丈夫だといった。お前は守るよ、と。 

 どうしておかしくなってしまったのだろう。私はそれがわからなかった。
 


「――ならばまた犠牲が出るだけです。知っておいでか?西の町は加護を受けることができず滅んだ」



 噂では聞いていた。
 エニンルドが手を下した、とか。事実かどうかは定かではないが、悪神の仕業であるのは間違いない。多くの人々が死んだだろう。

 また大地は血で染まる。
 死体の山が生まれる。
 地上の神や半神は力を失い倒れる。



「わかりました」




 エウリュ様!と悲痛な声が響いた。
 見捨てるおつもりか、などというそれに胸が痛む。だがその一方、私が去ればここの加護はどうなる、という本音も見えていた。



「ですが、この地を守って頂きます。人々が安心して暮らせるように」



 ――――私は、疲れたのだ。

 父が守るために身を削り、亡くなったように…。私も近いうち亡くなるだろう。


 その前に、何とかしたかった。


 私に、どうにか出来るかわからなかったが……。

< 7 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop