赤い婚礼衣装
父は生前、天上がおかしくなっている
といっていた。私は天上のことなど知らないしわからないが、父は不安そうな私を抱き締めながら、大丈夫だといった。お前は守るよ、と。
どうしておかしくなってしまったのだろう。私はそれがわからなかった。
「――ならばまた犠牲が出るだけです。知っておいでか?西の町は加護を受けることができず滅んだ」
噂では聞いていた。
エニンルドが手を下した、とか。事実かどうかは定かではないが、悪神の仕業であるのは間違いない。多くの人々が死んだだろう。
また大地は血で染まる。
死体の山が生まれる。
地上の神や半神は力を失い倒れる。
「わかりました」
エウリュ様!と悲痛な声が響いた。
見捨てるおつもりか、などというそれに胸が痛む。だがその一方、私が去ればここの加護はどうなる、という本音も見えていた。
「ですが、この地を守って頂きます。人々が安心して暮らせるように」
――――私は、疲れたのだ。
父が守るために身を削り、亡くなったように…。私も近いうち亡くなるだろう。
その前に、何とかしたかった。
私に、どうにか出来るかわからなかったが……。