オタ女子奈都子
結局彼からの電話は来なかった。今日は幸いにも土曜日で仕事も休みだから良かった。会いに行けるかも知れない。もし彼の家に直接訪ねていったら会ってくれるのだろうか?
悶々とした気持ちのままでは嫌だ。別れの理由は知りたい!聞いた上で何とか出来そうなら頑張ってみたい!
そう思ったら居ても立ってもいられなくなり、とっておきの黒のレースが入ったゴスロリ調のミニワンピと小さめ面積のショーツとブラ彼から貰ったエメラルドの指輪をはめて彼の住む○○町まで地下鉄で向かう。住んでいるアパートから地下鉄駅まで猛ダッシュで7分、彼の住む駅まで乗車10分、10階建てのレンガ色のマンションまで最短距離で8分息切れしながら向かう。
汗だくだけど家に着いたらシャワー借りたらいいしね。彼に久しぶりに会えるかもしれない期待で胸が弾んでいる。別れ話のメールが昨日来たのに復縁できるような感じがしている。この自信は勝負服と下着のせいだろうか?



今まで何度か別れたり復縁したりと危機は何度か経験している。その都度活躍したのは彼の好きな服装と意外と巨乳な私の体、推定Eカップ。この武器で繋ぎ止めたい。今回はヤバイから沢山サービスもして好きな体位も嫌がらない。感じている演技も追加する。だからお願い家に居て。居て下さい。



マンション前の表札で一呼吸し約3分程お願いをしてからインターフォンを鳴らす。「ピンポーン」ドア越しに聞こえる。良かった壊れてない。後は居てくれるのを願うのみ。


インターフォンの音が3回ほど鳴った頃ようやくドアが開く音が聞こえた。
キタ、キタついにキタ緊張の一瞬。
「誰?」


現れたのは身長約180センチ近く筋肉質で少し焼けたマッチョな男。年齢は恐らく私と同じ30台前半。ルックスはまあ悪くはない。目は二重だし鼻筋も通っている。唇は厚く割りとタラコ唇。眉毛は整えられた少し下がり目。髪型はサラサラストレートでツーブロック。割りと好みの顔だけど彼ではない。ていうか私のほうこそあんた誰?「あのう…」恐る恐る聞いてみる。




「ここは保阪さんの家だと思うんですが…」彼はマジマジと私を見つめ「俺は山本だけど…」驚いた表情と語尾を荒げながらこう言った。まずい怒っている。そしてどうやら他人の家だ。切れられたら困るので背一杯の申し訳なさそうな顔と低姿勢で聞いてみた。



「半年くらい前になるんですが、ここに保阪さんという男性が住んでいて、あのう…私用事があって訪ねたんです」
イケメンの彼の表情は驚いたままだった。一体何を考えているのだろう?怒らせない対策を練る事が出来ず困る。

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