温もりを抱きしめて【完】
両家の会社関係者が大勢招待された婚約披露パーティは、要さんが一時帰国してから1週間後に行われた。

会の最初に要さんのお父様と、私のお父様の話があり、その後に私達の紹介。

それが終わると、全員がグラスを片手に持って乾杯となり、パーティは始まった。




「ご婚約おめでとうございます」

「ついに要くんも決めたか」

「こうして並ぶと、とてもお似合いですこと」




乾杯の挨拶を終えると、私たちの元にはひっきりなしにたくさんの人が声をかけにやってきた。

最初は2人で並んで招待客の相手をしていたけど、次第にその数が増えるにつれ、要さんとは離れ離れになってしまっていた。



そして、今私の目の前には西園寺グループの関連会社の社長令嬢だとかいう人が、要さんとの昔話を延々と続けている。

正直彼女の話はもううんざり、という気持ちになってきていたけれど、そこは私も耐えた。

笑みを絶やさぬよう心がけて、相手の話を聞くようにつとめていた。



「それにしても、あれだけ誰かとの婚約を嫌がってた要さんに・・・どうやって取り入ったのかしらね」



嫌味っぽくそう笑う彼女。

私をつま先から頭の上までじっと見ると、フンッと鼻を鳴らす。



だけど、そんなことを言うのは何も彼女に限ったことじゃなかった。

今まで何人か、要さんとお見合いをしたことのある女の子たちが声をかけてきたけど、どの女の子も同じような反応だ。



―――大変だっただろうな。



そんな事を思いながらも彼女の相手を続けていると、急に肩をポンと叩かれた。

誰かと思って後ろを向けば、そこには少し眉間に皺が寄った要さんがいた。
< 109 / 171 >

この作品をシェア

pagetop