温もりを抱きしめて【完】
「要さんっ・・・」
突然の彼の登場に驚いたのは、私だけじゃなかったみたい。
先ほどまでペラペラ喋っていた彼女は、急に大人しくなって気まずそうな表情を見せた。
要さんは隣に立つと、私の手首を掴んで彼女を見た。
「悪いが、他の招待客に挨拶があるから連れてくぜ?」
要さんがそう言えば、彼女は少し不貞腐れた表情で「どうぞ」と答えた。
彼女の言葉を聞くと、要さんは私の手を引いて行こうとするので、慌てて彼女に「失礼します」と頭を下げて彼についていった。
ずんずんと会場を歩いていく彼の背中は、どこに向かっているのか。
挨拶と言ってたけれど、誰の所に行くんだろう。
ついに会場の外に出てしまった彼を見て、私は堪らず声をかけた。
「あの、要さん…誰がお呼びなんですか?」
私の言葉に要さんは足を止めると、呆れた表情を浮かべて振り向いた。
「……あのな、」
ハァと珍しく溜息をつく要さん。
だけど、私の問いについてそれ以上の言葉は返ってこなかった。
「いいから、ちょっと付き合えよ」
要さんはそう言うと、私の手を掴んだまま、また長い廊下を歩き出す。
彼の指先から伝わる体温。
掴まれた手に、私の意識は集中していた。
要さんには何気ないことかもしれないけど、女子校育ちで免疫のない私にはかなりの一大事で。
何だかそれを思うと、胸が少し苦しくなった。
突然の彼の登場に驚いたのは、私だけじゃなかったみたい。
先ほどまでペラペラ喋っていた彼女は、急に大人しくなって気まずそうな表情を見せた。
要さんは隣に立つと、私の手首を掴んで彼女を見た。
「悪いが、他の招待客に挨拶があるから連れてくぜ?」
要さんがそう言えば、彼女は少し不貞腐れた表情で「どうぞ」と答えた。
彼女の言葉を聞くと、要さんは私の手を引いて行こうとするので、慌てて彼女に「失礼します」と頭を下げて彼についていった。
ずんずんと会場を歩いていく彼の背中は、どこに向かっているのか。
挨拶と言ってたけれど、誰の所に行くんだろう。
ついに会場の外に出てしまった彼を見て、私は堪らず声をかけた。
「あの、要さん…誰がお呼びなんですか?」
私の言葉に要さんは足を止めると、呆れた表情を浮かべて振り向いた。
「……あのな、」
ハァと珍しく溜息をつく要さん。
だけど、私の問いについてそれ以上の言葉は返ってこなかった。
「いいから、ちょっと付き合えよ」
要さんはそう言うと、私の手を掴んだまま、また長い廊下を歩き出す。
彼の指先から伝わる体温。
掴まれた手に、私の意識は集中していた。
要さんには何気ないことかもしれないけど、女子校育ちで免疫のない私にはかなりの一大事で。
何だかそれを思うと、胸が少し苦しくなった。