温もりを抱きしめて【完】
「いってらっしゃいませ」
そう言って私を見送ってくれるのは、運転手の二宮さん。
西園寺家で働く使用人の中では若い方で、年齢は今年で34歳になるらしい。
普段は屋敷の清掃係として働いていて、要さんの専属運転手が休みの時には運転手の仕事もこなしているとの事だった。
ここ数日、行きと帰りの車の中で二宮さんはそんな話をしてくれて、まだ西園寺家に馴染めてない私に気を遣ってくれた。
涼しげな笑みが印象的で、爽やかな人だ。
「いってきます」
二宮さんにそう返すと、頭を下げる彼に背を向けた。
持っていたかばんを腕にかけ、校門に向かって歩き出す。
暫く歩くと見えてくるのは、私が通う帝桜(ていおう)学園の校門。
レンガ造りの塀に、金色の門構え。
門の両脇には、同じく金のライオンのオブジェが。
そして校門の奥にそびえ立つ校舎は、国の重要文化財にも指定されている立派な建物だ。
花びらがハラハラと舞い散る中、靡く髪を抑えながら並木道を歩く。
帝桜のモチーフである桜の木がびっしりと並ぶこの道が、私はすぐに好きになった。
何もかも忘れて見入ってしまう程、綺麗な景色。
それが、暗くなった私の心を癒してくれるようだった。
そう言って私を見送ってくれるのは、運転手の二宮さん。
西園寺家で働く使用人の中では若い方で、年齢は今年で34歳になるらしい。
普段は屋敷の清掃係として働いていて、要さんの専属運転手が休みの時には運転手の仕事もこなしているとの事だった。
ここ数日、行きと帰りの車の中で二宮さんはそんな話をしてくれて、まだ西園寺家に馴染めてない私に気を遣ってくれた。
涼しげな笑みが印象的で、爽やかな人だ。
「いってきます」
二宮さんにそう返すと、頭を下げる彼に背を向けた。
持っていたかばんを腕にかけ、校門に向かって歩き出す。
暫く歩くと見えてくるのは、私が通う帝桜(ていおう)学園の校門。
レンガ造りの塀に、金色の門構え。
門の両脇には、同じく金のライオンのオブジェが。
そして校門の奥にそびえ立つ校舎は、国の重要文化財にも指定されている立派な建物だ。
花びらがハラハラと舞い散る中、靡く髪を抑えながら並木道を歩く。
帝桜のモチーフである桜の木がびっしりと並ぶこの道が、私はすぐに好きになった。
何もかも忘れて見入ってしまう程、綺麗な景色。
それが、暗くなった私の心を癒してくれるようだった。