温もりを抱きしめて【完】
放課後。

図書館へやってきた私は、今日の授業の課題を済ませた後、雑誌をパラパラ捲りながら時間を潰していた。

ウチの学校の図書館は、本の他にも雑誌やDVD、CDが豊富で暇潰しにはうってつけの場所だ。

今はまばらな生徒も、テスト前になるともっと増えるらしい。

雪乃ちゃんが教えてくれた。




送迎の関係で今日は要さんと一緒に帰ることになった私。

生徒会の仕事が遅くまである要さんをどこで待とうかと思案していたら、部活終わりに雪乃ちゃんが勉強をしに行くと言っていたので、私も行ってみることにした。

授業で図書館に来ることはあったけど、放課後に行くのは実は初めて。

今までゆっくり見る暇がなかったものの、家にはないジャンルの小説もたくさんあるし、私にとって居心地のいい空間になりそうだった。


雪乃ちゃんが帰ってからは、雑誌コーナーをブラブラして、適当に何冊か手に取って自分の席へ戻った。

ジャンルはファッション、園芸、料理、レジャー。

普段は小説ばかり読んでるけど、こういう雑誌を読むのもなかなか面白い。


最後のレジャー誌を手に取って読む。

内容は、家族連れ、友人同士、カップル別のお出かけスポット特集だった。

家族ででかけた記憶は、ほとんどない。

行ったとしても、それは両親の仕事関係先だった気がする。


頬杖をついてページを捲りながら、流れる誌面に目を向けた。




と、ふと見えた文字に手を止めた私は、元に戻ってそのページを見返した。


『デートにうってつけ!絶対行きたいお出かけスポット10選』


その見出しもそうだけど、私の目を引いたのは郊外にあるフラワーパーク。

季節の花が何百種類と楽しめる、と書いているそこに映る色とりどりのガーベラの花がとても綺麗だった。



「……そこ、行きたいのか?」



しばらくそのページに目を奪われていると、後ろから声をかけられる。

ビックリしてバッと後ろを振り向けば、そこには私の手元にある雑誌を凝視する要さんの姿があった。
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