温もりを抱きしめて【完】
「...じゃあ、要さんは」
そこまで言って私は体を少し離して、彼を見上げた。
いつ見たって端正な顔立ち。
吸い込まれそうなその瞳を見つめ、聞く。
「…要さんは、いいんですか?政略結婚なんて」
藤堂さんじゃなく、私でいいのか。
自分の気持ちを口にするのを、我慢してるのは要さんの方じゃないのか。
私の目を見つめたまま、しばらく黙っていた要さんが口を開いた。
「...この婚約が嫌なら、破棄したって構わない」
その言葉は、私の胸をギュッと強く握りしめた。
私が嫌と言えば破棄してもいい、なんて。
私に対する要さんの気持ちは、結局のところそんなものでしかないんだ。
そう思うと、胸が痛かった。
「違いますっ!私は...っ」
そこで言葉が詰まる。
『好きだから、一緒にいたい』
そんな本心は、言えるはずもなかった。
少し俯いて、要さんから目を逸らす。
目の前に見える彼のシャツにそっと手を伸ばして、それをギュッと握りしめた。
「...私は、破棄したいだなんて思ってません」
『要さんと、離れたくない』
言葉では言えないけれど、シャツを掴むその行為が精一杯の私の気持ちだった。
「俺だってそうだ」
要さんはそう言って私の髪を撫でて、耳にかける。
瞬きをするとポロリと零れた涙が、また頬を落ちていく。
「……お前と同じだ」
その言葉がやけに響いて、頭を離れなかった。
それから要さんは私が眠るまで側にいてくれた。
ベッドの近くに1人掛けのソファを持ってきて、「ゆっくり休め」って…ぶっきらぼうにそう言った。
そんな優しさが嬉しかったけど、翌朝目が覚めた時。
そこに要さんの姿がなかったことに、私は寂しさを覚えた。
そこまで言って私は体を少し離して、彼を見上げた。
いつ見たって端正な顔立ち。
吸い込まれそうなその瞳を見つめ、聞く。
「…要さんは、いいんですか?政略結婚なんて」
藤堂さんじゃなく、私でいいのか。
自分の気持ちを口にするのを、我慢してるのは要さんの方じゃないのか。
私の目を見つめたまま、しばらく黙っていた要さんが口を開いた。
「...この婚約が嫌なら、破棄したって構わない」
その言葉は、私の胸をギュッと強く握りしめた。
私が嫌と言えば破棄してもいい、なんて。
私に対する要さんの気持ちは、結局のところそんなものでしかないんだ。
そう思うと、胸が痛かった。
「違いますっ!私は...っ」
そこで言葉が詰まる。
『好きだから、一緒にいたい』
そんな本心は、言えるはずもなかった。
少し俯いて、要さんから目を逸らす。
目の前に見える彼のシャツにそっと手を伸ばして、それをギュッと握りしめた。
「...私は、破棄したいだなんて思ってません」
『要さんと、離れたくない』
言葉では言えないけれど、シャツを掴むその行為が精一杯の私の気持ちだった。
「俺だってそうだ」
要さんはそう言って私の髪を撫でて、耳にかける。
瞬きをするとポロリと零れた涙が、また頬を落ちていく。
「……お前と同じだ」
その言葉がやけに響いて、頭を離れなかった。
それから要さんは私が眠るまで側にいてくれた。
ベッドの近くに1人掛けのソファを持ってきて、「ゆっくり休め」って…ぶっきらぼうにそう言った。
そんな優しさが嬉しかったけど、翌朝目が覚めた時。
そこに要さんの姿がなかったことに、私は寂しさを覚えた。