温もりを抱きしめて【完】
朝食を終えた私は急いで部屋に戻って、出かける準備を始めた。

どこに行くのか場所は教えてもらってないから何を着ようか迷ったけど、クローゼットの中からオフホワイトのワンピースとピンクのカーディガンを手に取って鏡台の前の椅子にかけた。

次はかばんを選ぼうと別のクローゼットを開けた時、奥の方に置いてある紙袋が目に入った。


要さんの誕生日に渡すつもりのプレゼントだ。

暴漢に襲われた時に砂まみれになってぐちゃぐちゃになったので、後日改めて新しいものを買い直した。

紺色に金の字でブランド名が書かれたシンプルな袋に、赤いリボンが結ばれている。

それを手に取った私は、もう片方の手で傍に置いてあったカバンも取り出した。


―――明日はバタバタして渡す暇がないかもしれないし...。


そう思って、少し大きめのカバンの中にその紙袋をそっと仕舞った。



時計を見れば約束の時間が迫ってきていて、慌てて着替えを始める。

髪はハーフアップにしてバレッタで留め、軽くメイクもして身なりを整えた。

忘れ物がないか、カバンの中もチェックして、最後に鏡の前でお気に入りの香水をシュッと一振りした。



コンコン。

部屋のドアをノックする音が聞こえ、「ハイ」と返事を返す。



「三上です。時間になりましたので、お迎えにあがりました」という三上さんの声に、私はカバンを手に持って部屋の扉を開けた。



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