温もりを抱きしめて【完】
エピローグ
月日は流れ、迎えた春。
冬が過ぎ、花や緑が美しくなるこの季節。
私は、この帝桜学園を卒業する。
大ホールに集まった卒業生、在校生、そして大勢の保護者。
その壇上に上がって、卒業生代表として答辞を述べるのはもちろん彼だ。
しんと静まり返るホールに響く、要さんの革靴の音。
その一挙一動にココにいる全員の視線が向けられている。
スピーチ台の前に立った要さんは両手をつき、右から左へと顔を動かし、ホールにいる人たちを見渡した。
いつもは聞こえる黄色い歓声も、今日は聞こえない。
ただみんなが、彼の第一声を待ちわびていた。
「冬の寒さも和らぎ、桜の花が咲き始める朗らかな季節になってきた今日。私達は、この帝桜学園を卒業します」
厳粛なムードで始まった要さんのスピーチに、みんな一様に耳を傾けていた。
堂々と、力強く話すその姿を見つめながら、私は1年前の春を思い起こした。
始業式で初めて見た、壇上で話す要さん。
彼と出会い、あの春から今日まで、私の人生は大きく変わっていった。
あの時は、夢にも思わなかった。
彼を好きになって、胸が苦しくなる程恋焦がれるなんて。
ましてや想いが通じるなんて、思ってもみなかった。
答辞を読み上げる要さんを、会場にいる全員がただただ静かに聞く。
学校生活のこと、先生への感謝の意、在校生へのエール...と話は続く。
その一言一言に、要さんの学校に対する想いが込められていた。
最後に「本当にありがとうございました」と言った時には特に、その気持ちが伝わってきた。
「卒業生代表、西園寺要」
スピーチが終わった。
そして、その言葉の後に全員が拍手をしようとした。
だけど、要さんが右手でそれを制止した。
冬が過ぎ、花や緑が美しくなるこの季節。
私は、この帝桜学園を卒業する。
大ホールに集まった卒業生、在校生、そして大勢の保護者。
その壇上に上がって、卒業生代表として答辞を述べるのはもちろん彼だ。
しんと静まり返るホールに響く、要さんの革靴の音。
その一挙一動にココにいる全員の視線が向けられている。
スピーチ台の前に立った要さんは両手をつき、右から左へと顔を動かし、ホールにいる人たちを見渡した。
いつもは聞こえる黄色い歓声も、今日は聞こえない。
ただみんなが、彼の第一声を待ちわびていた。
「冬の寒さも和らぎ、桜の花が咲き始める朗らかな季節になってきた今日。私達は、この帝桜学園を卒業します」
厳粛なムードで始まった要さんのスピーチに、みんな一様に耳を傾けていた。
堂々と、力強く話すその姿を見つめながら、私は1年前の春を思い起こした。
始業式で初めて見た、壇上で話す要さん。
彼と出会い、あの春から今日まで、私の人生は大きく変わっていった。
あの時は、夢にも思わなかった。
彼を好きになって、胸が苦しくなる程恋焦がれるなんて。
ましてや想いが通じるなんて、思ってもみなかった。
答辞を読み上げる要さんを、会場にいる全員がただただ静かに聞く。
学校生活のこと、先生への感謝の意、在校生へのエール...と話は続く。
その一言一言に、要さんの学校に対する想いが込められていた。
最後に「本当にありがとうございました」と言った時には特に、その気持ちが伝わってきた。
「卒業生代表、西園寺要」
スピーチが終わった。
そして、その言葉の後に全員が拍手をしようとした。
だけど、要さんが右手でそれを制止した。