温もりを抱きしめて【完】
太陽の日差しがポカポカと暖かい昼休みのこの時間。

ご飯を食べ終えた私は、ごちそうさまでしたと手を合わせ、弁当箱を包み直した。

椅子の背にもたれかかって背伸びをすると、縮こまっていた体が伸ばされて気持ちいい。


転校したばかりの私は、まだ周りにあまり馴染めてなくて、みんなと話してると少し気疲れす る。

加えて長年住んできた家も出て、知らない人に囲まれての生活。

慣れない環境にいるからこそ、今みたいな時間は誰にも気兼ねなく過ごせる時間だった。



そんな事を考えながら、ちらりと窓の外の庭に視線を移した。

色とりどりの花が植えられた花壇がとてもキレイだ。

この学校には緑や花が多くて、校内にも植木鉢や花瓶に咲く花をよく見かける。

頬杖をつきながらぼーっと視線を流してると、庭の隅の方にあるベンチに座る男女が目に入った。


「…、あ」


思わず漏れてしまった声。

なぜなら、よく目を凝らして見てみると、男子生徒は私の婚約者ーーー要さんだったからだ。

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