温もりを抱きしめて【完】
「ホント?!実は、この花壇アタシが手入れしてるの!」


「そうなの?」


「こう見えて園芸部の部長なんだ!ハンカチも花壇の手入れしてる時に落としちゃって」



学校の花壇の手入れは、専門の人を雇ってるんだと思ってたから驚いた。



「はぁ~!そうやって言ってもらえると、やっててよかったって思えるわ~」


夏希ちゃんはおでこに手を当てながら、感慨深そうにそう言った。


「花壇の手入れって生徒でしてたんだ。てっきり業者の人がしてるかと思ってた」

「一部業者にお願いしてる所もあるんだけどね。ほとんどは、園芸部でやってるよ」


夏希ちゃんはそう言うと、じょうろを手に取って見せてくれた。


「園芸部って何人いるの?」


お坊ちゃまお嬢様が通う帝桜だもん。

そんな子たちが土イジリする姿なんて、正直想像がつかない。

だから「それ聞く?」なんてジト目でこっちを見てくる夏希ちゃんの答えは、案の定予想通りだった。



「......4人よ、4人」



悲しそうな声色でそう言われると、聞かないでいた方がよかったかなと後悔する。

帝桜には部活や同好会がたくさんあるから、その中で園芸部を選ぶ人は少ないんだろう。



「そ、そうなんだ。4人でこの花壇手入れするの大変そうだね」


私がそう言うと、夏希ちゃんは花壇の脇に置いてあった道具を片付け始めた。


「そうなのーウチの学校敷地広いし。でもまぁ、好きでやってるからしんどいって感じた事は一回もないけどね」


歯を見せて笑う夏希ちゃんは、本当に園芸部の活動が好きなんだ、と初対面の私でも感じるくらい嬉しそうに話してくれた。
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