温もりを抱きしめて【完】
「そう言えば、伽耶は何部なの?」


花壇の縁に座った夏希ちゃんは、枯れかけている葉っぱを紡ぎながら尋ねてきた。



「私は転校してきたばかりだから、何も入ってないの」



私がそう言うと、バッとこちらを向いた彼女が見上げてきた。

パチパチと目を丸くさせて、驚いてる様子が見てとれる。



「え?嘘!転校生って伽耶のことだったの?」


「うん、...」


「そうなんだ~。転校生が来たってのは知ってたけど、クラス離れてるし、誰までは知らなかったから」



夏希ちゃんがそう言うのも無理はないと思う。

何せこの学校は生徒数が多くて、クラスが違えば、教室だって棟が離れていたりする場合があるくらい。

だから同じ学年でも、知らない生徒がいたって全く不思議じゃない。




「あ、そうだ!」


ひざに手を置いて頬杖をついていた夏希ちゃんの表情が、何かひらめいたのかパァと明るくなる。

そしてこちらを見たかと思うと、突然私の手を取って胸の辺りの高さでギュッと握り締めてきた。



「伽耶、さっきココの花壇がキレイでたまに見にくるって言ったよね?」


「うん、言ったけど...」



迫ってくる彼女に、圧倒されて体が少し引き気味になる。



「って事は、花が好きな訳だ」


「う、うん」



確かに花は昔から好き。

部屋には欠かさず花を飾るようにしてるし、華道やフラワーアレンジメントのレッスンもよく受けていた。

ただ、この後に続くであろう夏希ちゃんの言葉に思わず身構えてしまう。



「花が好きなら問題ナシね!花好きに悪い人はいないって言うし」



だって、ほら。

目をキラキラさせて、期待の眼差しでこっちを見てくるんだもん。



「園芸部、絶賛部員募集中なんですけど、入らない?」



そんな笑顔の彼女から、逃げられる人なんているんだろうか。

……いや、多分いないだろう。
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