温もりを抱きしめて【完】
その日から毎日のように屋敷を出ていく要さんを見送った。

冷たい態度は相変わらずで、投げかけた言葉に返事なんて返ってこないけど。

それでも諦めず、その背中に「いってらっしゃい」と言い続けた。



こんな事を続けて意味があるのか。

そう思う時もあるけど、こうやって無理矢理にでも接点をつくらなきゃ要さんに会う事も出来ない。

平行線の関係にだって、いつか終わりが来る。

今はそれがよくない結果にならないよう、努めるだけ。



愛なんていらないから。

西園寺家の妻という肩書きを、私に。

この時はそれしか考えていなかった。

誰かからの愛情よりも、自分の立場を守るのに必死で。

1番大切なことなんて、何ひとつ見えていなかったんだ。


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