温もりを抱きしめて【完】
「あと、校内にも何カ所かあるんだよね」


校庭の花壇の案内が終わると、そう言った夏希ちゃんに連れられて今度は校舎を歩く。

確かに校内にも植木鉢がいくつかあり、私も目にしたことがあった。

普段行かない階の廊下を歩くのは楽しくて、夏希ちゃんは転校したての私にいろいろ教えてくれた。


「で、ココが第5視聴覚室ね」

「第5?」

「そう!まぁ、ココ使うのは生徒会がメインだけどね」


”生徒会”そのフレーズに思わず胸がドキリとする。


「生徒会…?」

私が尋ねると、夏希ちゃんは「ほら」と少し離れた教室を指さす。


「生徒会室があそこ。行事で流すDVDの試写なんかする時にこの部屋よく使うの」


夏希ちゃんの後に続いて生徒会室の前まで行くと、夏希ちゃんはそのままドアノブに手をかけた。


「え?ちょっと…っ」


と、私が驚いていると、クルリと振り返った夏希ちゃんが不思議そうな目でこっちを見る。


「どしたの?伽耶。入んなよ」

「だって勝手に入って大丈夫なの?」


と、言う私の言葉にキョトンとする夏希ちゃん。



「だって私生徒会役員だよ?生徒副会長」



それを聞いた私は唖然とするしかなかった。

だって夏希ちゃんが生徒会役員だなんて、今の今まで知らなかったから。
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