温もりを抱きしめて【完】
「お茶を用意しますので、こちらでお掛けになってお待ちください」
「ありがとうございます」
応接室に案内された私は、言われるがままソファに腰を下ろした。
うちの家は純和風の邸宅だったから、部屋の中にある調度品や壁にかかっている絵画が珍しく感じる。
改めて今日からココに住むんだ、と思うと少しだけ不安が胸に広がった。
会ったこともない人と、決められた結婚。
広いこの大きな屋敷には、私の知り合いなど誰1人としていない。
...上手くやっていけるかな。
そんな弱音が頭を過ぎる。
だけど、そんな素振りを感づかれないように。
私はピシっと姿勢を正して、座り直した。
ココで私が気をつけるのは、夫となる婚約者に嫌われないよう生きること。
そして―――。
どんな時でも笑ってみせて、ただ与えられた居場所に必死にしがみつくことだけだ。