温もりを抱きしめて【完】
「あ、会長!おはよー」


学校に着いて生徒会室に向かうと、花の水やりをしている東條がいた。


「朝から花の世話か?ご苦労なこった」

「昨日の放課後、いろいろ忙しかったからさ。来れなかったの」


鼻歌を歌いながらご機嫌な様子。

「そうか」とだけ返すと、俺は棚にあるファイルから来月実施する球技大会の資料を探した。


「あ、そうだ会長!聞いて、聞いて!」


植木に水をやっていた東條が、くるりと振り返って俺を見る。


「何だ?」


と尋ねると、嬉しそうににっこりと笑う東條。


「新入部員入ったの!部員5人になったから、助成増えるよね?!」


ウチの学校は、部員数によって学校から支給される活動助成金の額が異なっている。

5人以上になると、助成のランクが上がるので、東條も新入部員を集めるのに必死になっていた事を思い出す。



「ああ、いいぜ。次の部長会までに予算案まとめとけよ」

「やったー!これで新しい道具が買える〜!」



両手を挙げて、喜ぶ東條。

ホントにコイツはいつ見たって、元気な奴だ。



「それにしたって、よく集めたな。今年は2人だろ?」


止めていた手を動かして、探している他の資料のファイルをパラパラと捲りながら、そう尋ねた。


「最初は1人だけだったけど、昨日もう1人入部が決まったんだー」


水やりを終えた東條は、イスに座って俺を見る。



「ほら、ウチの学年にいたでしょ?噂の転校生」



それを聞いて、ファイルを捲っていた手がまた止まる。


...転校生?



「おい、それって」


「E組の藤島さんだよ?黒髪ロングの和風美人」
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