温もりを抱きしめて【完】
「あ、伽耶と新!お疲れ〜!」


今日の手入れが全部終わって片付けをしていると、夏希ちゃんの声が聞こえてきた。

私と新くんも、お疲れ様と口々に返す。


「生徒会の仕事終わったの?」

「うん、とりあえず今日中に片付けなきゃいけない議案は全部まとまった」

「この時期、帝桜祭の準備で生徒会も大変ですねー」


そういえば、そろそろ文化祭の時期だって担任の先生が話してたっけ。


「俺、めっちゃ楽しみにしてるんですよー!帝桜祭!」

「まぁ、ウチの学校のメインイベントだもんね〜。外部からの入場者もかなり多いし」


興奮気味の新くんに、ちょっと得意気な夏希ちゃん。

今年転校してきた私は、その『帝桜祭』がどんなものか分からない。


「そんなにスゴイの?帝桜祭って…」


私がそう尋ねると、「あぁ、そうか」と2人は私に説明してくれた。


「伽耶は4月から来たから知らないよね。ウチの帝桜祭はそこらの文化祭とは桁違いの盛り上がりだよ」

「そうなんだ」

「まぁ、それも西園寺先輩が会長になってかららしいですけどね。それまでは、あんまりだったんでしょ?」


『西園寺』その名前を聞いて、思わずピクリと反応してしまう。


「そうだねー。基本ウチの学校はお坊ちゃんお嬢様が多いから、どっちかっていうともてなされる側の人間だからね。学校行事を全力で楽しむって発想がなかったんだと思う」


「だから、伽耶も楽しんでね」と言う夏希ちゃんに曖昧な笑みを返して、私は「うん」と頷いた。

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