温もりを抱きしめて【完】
「じゃあ、今から帝桜祭の役割分担を決めたいと思います」


学級委員の2人が前に立ちそう言うと、教室内がザワザワし始めた。

黒板にはズラリと係りの名前が書かれてあって、その下には定員が何人と続いている。



どの係りがどんな仕事をするかは、配布されたプリントに簡単に書かれていた。

ざーっと目を通してみるけど、これと言ってやりたい係りもない。

どうしようか、と悩んでいる内に立候補で決めていくことになり、余った係りはジャンケンで決めることになった。


「まずは、装飾から決めます。やりたい人は挙手してください」


委員長の声に何人かの手が挙がり、黒板に名前が埋められていく。

ウチのクラスは喫茶店を出店することになっていて、当日までの役割と当日の役割とそれぞれ2つの係りを決めるみたい。



「伽耶ちゃん、係り決めた?」


トントンと背中を叩かれ振り向くと、いつも話しかけてくれる女の子グループの1人―――すみれちゃんがそう尋ねてきた。


「ううん、まだ。すみれちゃんは決まってるの?」


「綾子(あやこ)たちと、食材係りにしようって言ってるんだ。伽耶ちゃんも、一緒にやらない?」


彼女たちが少し苦手とはいえ、誘われて断る理由もなかった。

どうせだったら...と思って私は「じゃあ、やろうかな」と返事をすると、彼女たちと同じように『食材係り』に手を挙げることにした。
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