温もりを抱きしめて【完】
クラスでの役割分担を決めた翌日。

1限目は集会になっていて、全校生徒が体育館に集められた。

今日の集会は生徒会が主催で、帝桜祭の企画の説明や連絡事項があるとのことだった。


体育館に入ると、前には生徒会役員と実行委員がズラリと並んでいて、その中にはもちろん要さんの姿もあった。

何日かぶりに、彼を見た。

あの一件以来、朝のあいさつはやめてしまったので、家の中で顔を合わせることがなかったからだ。



相変わらずその整った容姿は周囲と違って異彩を放ち、どこにいても目についてしまう。

資料を見ながら夏希ちゃんが彼に話しかける姿を見て、「そういえば副会長だったんだ」と彼女が言ってたことを思い出す。

いつも笑ってる印象の強い夏希ちゃんのキリッとした表情。

普段と違うそんな夏希ちゃんを目で追っていると、マイクスタンドの前に立った彼女の声で集会が始まった。



「生徒のみなさん、おはようございます。今日は、生徒会より帝桜祭で開催される企画の説明と、今後予定している各種委員会や講習会の説明を行います」


夏希ちゃんはそう言うと、マイクを手に取って歩き出し、1年生の列の近くまで行って、後ろの方を指さした。

そちらを見れば、男子生徒が2人前を見ずにおしゃべりしていたようだ。


「大事な話なので、しっかり聞いてメモを取ってくださいね」


にっこりと笑顔を添えて注意する夏希ちゃんに、2人は慌てて「すみませんでした」と頭を下げる。


それを確認した夏希ちゃんは、また元いた場所へ戻っていった。

ウチの生徒会が生徒たちから絶大な人気を誇る理由が、この時ちょっとだけ分かった気がした。
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