温もりを抱きしめて【完】
用意された部屋に着くと、私はベッドの縁に座り込んだ。



無駄に広い部屋。

そんな印象の室内だった。

家具はウッド調の落ち着いた色味で統一されていて、派手過ぎずシンプルな部屋になっている。


窓際にある机の傍には、新しい学校の制服やかばんが置いてあった。

白のブレザーに薄いピンクのリボン、水色のチェックのスカートは有名なデザイナーがデザインしたものらしい。

校内だけでなく、他校の生徒からも人気が高いんだとか。

部屋に着くまでに、間島さんが教えてくれた。

それにしても―――。




「どんな人なんだろ...」


婚約者は、西園寺 要(さいおんじ かなめ)という同じ年の男の子・・・という事しか聞いていない。

さらに言うならさっき生徒会長をやっている、って聞いたくらい。

写真も見せてもらえなかったから、顔だって分からないまま。



…生徒会長をするくらいなら、真面目なタイプの人かな。



ベッドにばたんと倒れこんで、あれこれ考えてみるけど。


「...すぐに分かるよね」


どうせ、この後会う訳だし。

考えるだけ無駄な気がしてきた。


とりあえずそれまでは、荷物の整理をして時間を潰すことにしよう。



私はベッドから起き上がると、机の傍にあるダンボールを開けて作業に取り掛かった。
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