温もりを抱きしめて【完】
校内を巡回しながら各クラスの進捗状況を確認していく。

どのクラスも問題なく作業が進んでいるようで、特に困っている様子はなかった。


「西園寺様、これウチのクラスのチケットです!お時間があれば、また来てください!」

「是非お待ちしてます!」


行くクラス毎にチケットやチラシを渡され、それをポケットにしまって次のクラスへ向かう。

次は3-E。

E組以降は別の棟にあり、渡り廊下を通る。

教室や廊下で作業する生徒たちの賑やかさはどこも変わらないが、E組へ向かうと何やら言い合いになっている声が聞こえてきた。

中を見ると、ピリピリしたムードが漂っている。



「オイ、どうした」

俺が声をかけると、教室内の視線がこちらに向いた。

俺の姿に驚いた様子だったが、側にいた委員長が俺の所までやってきた。


「西園寺くん…それが、模擬店で使う食材がまだ届いてなくて。業者のミスなんだけど、もう明日の配達に間に合わないみたいで」

委員長がそう言うと、クラスのざわめきはさらに大きくなった。

「食材の担当は?」

「あの、私たちと…あとココにはいないけど、もう1人」


それを聞いて、数日前の衛生講習会に参加していたあの女を思い出す。


「あと1人は何やってんだ」

「仕入れは藤島さんに任せてたから…『何とかするから』ってどこかに行っちゃいました」

「お前らは何の仕事やってたんだ?」

「私たちは、その…部活の方が忙しくて…」


俺がそう尋ねると、バツが悪そうな顔をする3人。

ったく、大方面倒な仕事は押し付けて自分たちは楽してたってとこか。
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