温もりを抱きしめて【完】
「伽耶様、伽耶様」


外から聞こえる声と、コンコンとドアをノックする音。

それが聞こえてハッとした私は、慌ててベッドから体を起こした。

そのまま扉に近寄り、ドアを開けると三上さんが立っていた。


「すみません、お休み中に。要様が帰って来られました」


それを聞いて、ドキリとする。

学校で話すのとは、また訳が違う。


「着替えてからこちらに来られるとの事なので、伽耶様はココでお待ちください」


「…分かりました」


三上さんは私の返事を聞くと、「…大丈夫ですか?」と尋ねてきた。

遠慮がちに私の顔を見る三上さん。

彼女は要さんの、私に対する態度を見てきているから少し心配なんだろう。


私は「ハイ」と返事をすると、彼女に笑ってみせた。



少し緊張はするけれど、今の私の気持ちをちゃんと要さんに伝えたい。

そう思った。



「じゃあ、何かあればまたおっしゃってくださいね」


三上さんは一礼すると、「では失礼します」と部屋を出ていった。


私は髪の毛を手ぐしで整えて、スカートの皺を伸ばした。

それから彼が来るまでの間は、どこか落ち着かなくて居心地が悪かった。

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