温もりを抱きしめて【完】
次の日の18時。

身支度を整えた私は、荷物を持った三上さんと玄関へとやってきた。

玄関には間島さんを始めとする屋敷のスタッフが並んでいる。

「お気をつけて」と声を掛けられながらその間を通っていくと、間島さんが玄関の扉を開けてくれた。


「伽耶様、車の用意は出来ています。要様はもう乗車されておりますので、どうぞこちらへ」


「ハイ」


そう言われると、少し緊張して体にグッと力が入る。

何せほとんど会話をしたことのない相手だ。

そんな彼と今から空港までの道のりを、一緒の空間で過ごすなんて緊張しない訳がない。


三上さんは荷物をトランクに詰め、間島さんは車のドアを開けてくれる。

私が2人に「いってきます」と言うと、「お気をつけていってらっしゃいませ」と深々とお辞儀をしてくれた。


私はゆっくりと後部座席に乗り込む。

すると、窓の外に目を向ける要さんの姿があった。

バタンと閉まるドア。

運転手の二宮さんの「よろしいですか?」という言葉に「ハイ」と返すと、車は静かに発進した。


< 86 / 171 >

この作品をシェア

pagetop