一年の恋。一年後の恋。
堤川さんに連れられてきたのは
細い路地が入り組んだ所にある番屋
「いらっしゃい」
そこは年配の夫婦が二人で営んでいる
どこか懐かしい感じのお店
座席も少なくカウンターに5席
小上がりが2席のこじんまりしていた
「おじさん、ビール二つ」
「あいよー」
まだ早い時間もあって
まだお店には誰もいない
私達はカウンターに座った
二人っきりの個室や向かい合わせに
なるよりは全然マシ。
「はい、どうぞ」
ビールジョッキ2つと、お通し。
「お疲れ様」
『…お疲れ様です』
そう言って小さく乾杯した
ゴク、ゴク……
やっぱり美味い…
「ねぇちゃん、いい飲みっぷりだね」
おじさんが豪快に笑いながら言う
『ビールは美味いです、お酒はイケる口なんで、自分でも嫌になります』
そう笑うと、隣にいる堤川さんも笑った
「ねぇちゃんの飲みっぷりに、コレ」
そう言って出てきたのは……
私の大好物のイカ焼き