一年の恋。一年後の恋。



「おはようございます、本社の営業から来ました堤川です」



珍しく、事務所に来客があった
本社から人が来るなんて初めてだ


『お疲れ様です、事務の笹森です』


私が堤川さんに近づく
堤川さんは、ガサゴソと大きな鞄から何かを取り出した


「これ、皆さんで食べてください」


……お土産かな?


『ありがとうございます、今日は…』


何しに来たのかわからない
事務所には誰もいないし
誰かが来るなんて聞いてなかった


「あれ、聞いてませんか?所長にメールしたんだけどな……」



社内メールかな?
所長は少し抜けてる所もあるからもしかしたら忘れてるのかも…



『もしかしたら、忘れてるかも……今確認しますね、座って待っててください』


忘れてるよ、絶対……
なんだか、可笑しくなる


所長の携帯に連絡をし
堤川さんが来てることを伝えると
慌てていて、すぐ戻ると言ってきた



『堤川さん、すみません。すぐ戻るそうです。コーヒー淹れますね』


所長の慌てぶりに、笑ってしまう
堤川さんも、それに気がついたみたいで


「ははっ……ったく、所長なら……」


そう笑ってくれた。
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