控え目に甘く、想いは直線的
「拓人のやつ……」


「はい?」


「いや、なんでもない。野々宮はどっちがいいと思った?」


「そうですね、私はこちらかなと思ったんですが」


B案を指差すと要さんはそれを手に持って、見る。


「俺もこっちがいいと思う。こっちで進めておいて。で、実施日はいつ?」


「はい、分かりました。今のところ、9月上旬を予定してますけど、遅いでしょうか?」


「9月上旬か。その頃なら夏の休暇もみんな終わっているだろうからちょうどいいかな。うん、その頃でいいよ」


「分かりました。お忙しい中、聞いていただき、ありがとうございました」


悩んでいたものが解決したので、産業医に即連絡をしようと要さんに頭を下げて立ち上がる。


「夕美」


「はい?」


名前で呼ばれたことに動きを止めると、手首を掴まれた。


「明日、絶対に俺も行くから、拓人と二人で行くなよ」


「分かってます」


「何が分かってる?」


「大石さんと二人では行きません……んっ」


腕を掴まれ、要さんのもとへ引き寄せられ、キスをされる。
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