控え目に甘く、想いは直線的
「要さん」


「ん? 落ち着いたらどこか一泊旅行に行くのでもいいな」


要さんは既に先の楽しみを考えていて機嫌よくしているので、訂正を言い出せない。それにしても、私たちは旅行に行く関係なのだろうか?

今夜の大石さんの質問をさりげなく避けていたけど、実際要さんはどういうつもりなんだろう?

私の心の中はモヤモヤが広がった。やっぱりハッキリさせたい。でも、それには私の気持ちを伝える必要もある。

今が伝えるタイミングかな。でも、突然言うのも……それにここで言ったら、運転手にも聞かれてしまう。


「お客さん、ここは真っ直ぐですか? 左に行きますか?」


「真っ直ぐ行って、次の交差点を左に行ってください」


どう切り出そうかと悩んでいるうちに家の近くまで来ていた。ふと要さんを見るとタブレットを操作していて、画面はどこかのホテルだった。

私が悩んでいる間、宿泊先を検討していたようだけど、気が早くないだろうか。


「九月の三連休、空けておいて」


「はい……」
< 172 / 224 >

この作品をシェア

pagetop