控え目に甘く、想いは直線的
園田さんの言葉は右から左へと流れていく。私は素敵な人で尊敬していると話したことを要さん自身に聞かれたことが気になっていた。

私の言葉を聞いて、どんなふうに思ったのだろう。

何度かカウンター席にいる要さんを見たけど、1度もこちらを向かないで、私たちよりもあとに入ったのに、先に出ていった。



三日間の面接が無事終わり、待合室と面接室を片付けて人事部に戻ると先に戻ったはずの要さんと大石さんの姿がなかった。

あれ、いない? あ、隣かな?

隣の応戦室から声が聞こえた気がした。

ノックをすると大石さんの声で返事が来る。大石さんが一人用のソファーに座り、反対側の三人用に要さんが座っていた。


「やっぱりこちらにいたんですね。お二人ともいないからどこに行かれたのかと……お疲れのようですね。コーヒーでも飲みますか?」


「うん。砂糖を入れてくれるかな」


「はい。お待ちください」


珍しく大石さんの声に張りがない。笑いかけてはくれるが、弱々しい笑顔だ。

要さんはソファーに深く腰掛け、頭を少しあげて、目を閉じていた。
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