控え目に甘く、想いは直線的
「えっ、そうなんですか?」


私はなんてことを力説していたのだろう。あの日の自分の口に静かにしなさいとガムテープでも貼りたい。


「人を好きになることは素晴らしいことなんだと言い、部長は今、好きな人がいますかと聞かれた」


「ええっ! 本当ですか?」


「お待たせ致しました。こちらスープになります」


目の前に温かいスープと見た目からして美味しそうな前菜が置かれたが、呑気に味わえない気分になってきた。「ほら、食べよう」と言われるが、私の不躾な質問に要さんがどう答えたのか気になる。

スープを一口飲むが、もう一口と続かず、要さんを見つめた。


「なんだよ? 食べないとメインが来るよ」


「だって、気になります」


「ちゃんとあとで知りたいことは全部話すから、まず食べよう」


全部話してくれることを約束して、私は食べることに専念した。

美味しい料理に感動し、目の前の夜景にも何度も感動した。


「本当に幸せな気分です」


「じゃあ、その気分のままで帰るのがいいな」


「あ、でも、まだお話の続きが。あとで話してくれるって、言いましたよね?」
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