控え目に甘く、想いは直線的
「なにか勘違いしていないか? コーヒーのおかわりをもらうから気持ちを落ち着かせて」


「はい……」


すぐに新しいコーヒーが運ばれてきた。砂糖を入れて、かき混ぜる。熱々のコーヒーに息を吹きかけて、飲む。

要さんも同じように飲んでいて、私の様子を窺うように見ていた。


「なんでいきなり帰ろうとした? まだ話の途中だし、夕美の話も聞いていない。話したいことがあるんだろう?」


「私の話はもういいです」


失恋が決定した今、自分の気持ちを伝えることは出来ない。気持ちを伝える前で良かった。

明日からいつものように仕事をするのは辛いけど、きっと時が解決してくれる。

だから、大丈夫だ。


「じゃあ、なんで泣いた?」


「えっ? あの、その……」


なんでもいいから嘘の理由でもいいから何かを言いたいのに、言葉が出てこない。どうしよう。


「俺の好きな人、誰だと思った?」


「私の知らない人」


誰かなんて分からない。要さんの交友関係は大石さんしか知らない。

要さんからも大石さんからも女性の話を聞いたことがない。


「なんだよ、それ。やっぱり勘違いしてる」


「えっ?」
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