控え目に甘く、想いは直線的
そういえば、先ほども勘違いしていないか聞かれた。要さんは何が言いたいのだろう?


「夕美だよ」


「はい?」


「好きな人、お前。夕美だよ」


「嘘……」


要さんはコーヒーを一口飲んで、真っ直ぐ私を見つめる。

要さんの好きな人が私?

何でそんな嘘を?


「まだ信じられないという顔してるな。何で嘘だと思う? 俺は十分態度でも表してきたつもりだけど。好きだから一緒にいたいと思ったし、キスもした。それなのに、何が信じられない?」


「だって」


「そういえば、あの日も嘘でしょー? と笑い飛ばしてたよな」


あの日も要さんの答えは同じだった?

何を言われてもあの日のことは思い出せない。


「でも、好きになってから一年って……」


一年前、私たちは知り合っていなかったはず。


「俺たちはいつ出逢った?」


「いつって、入社式のときに……あ! ええっ! 一年前って、まさか」


肝心なことが抜けていたことに気付く。私と要さんが出逢ったのは一年前だった。涼さんに連れられていったブティックで会い、その約一ヶ月後に採用試験の面接で会った。

と、いうことは……
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